土佐山には、 おいしい食材を届けたい、美しい産品を届けたい、
という村人たちの想いから生まれる、自慢の特産がたくさんあります。
『本物の味を届けたい』大崎裕一
2021 .04 .01
夢産地とさやま開発公社の理事である大崎裕一さんは、おいしい卵をみんなに届けたいという想いから、『土佐ジロー』も育てています。土佐ジローを始めたきっかけや、育てる上でのこだわりについてお聞きしました。
——— こんにちは。大崎さんは、夢産地とさやま開発公社で、生姜や柚子・四方竹などたくさんの作物を育てていらっしゃいますが、 特に思い入れが強いのは 「土佐ジロー」でしょうか?
大崎 そうやね。想いは全部の作物にあるけんど、個人的な想いが強いのは、土佐ジローやね。
——— まずは、大崎さんの生まれや、お家についてお聞きしたいです。
大崎 生まれはね、土佐山の高川地区。家は、炭焼きなどの山仕事が主で、あとはミョウガや原木椎茸、麦などを作ったり、こんにゃく・豆腐・醤油も自家製で作りよったかな。
小さな頃に食べた “本物の味” を、
また食べられるかもしれない。
——— 土佐ジローを育てようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?
大崎 小さい頃に、家の庭先に山羊やひつじ、棟続きの建物には牛がいて、その真ん中に、庭を走りゆう鶏がいっぱいおった。卵を産まんなった後も、ゴボウと炒めて肉も食べよった。今の鶏肉みたいに柔らこうのうて、固くて、ギシギシ噛めば噛むほど美味い、 “本物の味” じゃったね。
「土佐ジロー」は、 高知県原産の天然記念物『土佐地鶏』の雄と、アメリカ原産の在来種ロードアイランドレッドの雌を交配して生まれた一代雑種で、「土佐ジロー」なら、またあの “本物の味” を食べられると思った。あと、有機農業を発展的に続けていきたかったし、BMW技術 をみんなに広めるには、鶏舎の環境の違いが解りやすいと思った。
——— BMW技術というのは?
大崎 BMWは、”バクテリア・ミネラル・ウォーター” のことで、自然浄化作用という、自然に備わる循環の力を利用したもの。「生き物が健康になる」「臭いがなく、人間に不快感がない」「その生き物を食べるときに、おいしくなる」という利点があった。これなら、小さな頃に食べた、庭で走り回っていたあの鶏の味を、また食べられるかもしれん。ほんなら鶏を飼ってみようと、はじめた。
——— 確かに、私が土佐ジローの鶏舎に伺った時に、臭いが全くしませんでした! そういうことだったのですね。
大崎 本当は森に放し飼いしたら、臭いはしないんだよね。でもさすがに森の中では飼育できない(笑)。鶏舎で森と同じ環境を効率的に再現できるのが、このBMW技術なんだよね。
土佐ジローの餌は、
有機野菜や自然のミネラル豊富な野菜
——— その他に、土佐ジローを育てる上でのこだわりは何でしょうか?
大崎 そうやね。餌はこだわっていて、有機野菜や、山にある自然の野草を与えているかな。寄生虫に悩まされた時も、 土に石灰を入れて耕すことを繰り返したりして、時間はかかるが、化学薬品は使わず対処をしてきた。
——— 大崎さんオススメの、土佐ジローの卵のおいしい食べ方は何ですか?
大崎 そりゃあやっぱり、卵かけごはんやね。白身と黄身、それぞれを味わうのがオススメ。
——— 白身と黄身を分けるってことですか?
大崎 そうそう。ご飯の上にそのまま卵を割って、箸で黄身をギュッっと挟んで、白身と黄身を分ける。まず、白身だけを食べきってから、黄身を食べる。白身は、スッキリした、ほのかな甘みがするんだよね。
——— お箸で黄身だけを挟むのが難しそうですね(笑)。
大崎 健康な卵だったらできるはず。高度な技じゃあない(笑)。
——— なるほど。今度チャレンジしてみます! こういう食べ方があることを、オーベルジュ土佐山のお客さんにも伝えていきたいですね。
土佐ジローのおいしさを、
次世代にも届けていきたい。
——— いま抱えている課題はありますか?
大崎 これからの後継者が必要やね。安定供給していくためにも、もう少し拡大していきたいとも思っている。実はもう土地の候補もかまえちゅうがよ(笑)。僕は、鶏を眺めよったら、時間を忘れちゃうんだよね。飽きが来ない。そういう気持ちになる人にぜひやってもらいたいな。
——— 未来に残していきたいことは?
大崎 うーーん、残したいことが、途切れてしまってきている現状ではあるんだけど….、残念ながら、自分の子供も外に出してしまったり。でも自分は、小さな頃から自然の中で、自然の大きさを感じて暮らして来た記憶はある。暮らしの拠点を田舎において、自然の中に身を置き、触れることで、体感していける人たちが増えたらいい。途切れかけてきてしまっている、暮らしの知恵や技も、体感することで育めるはず。人間本来持つカラダの能力は、備えちゅうはず。
——— 最後に、日々の土佐山での暮らしで、幸せを感じる時はいつですか?
大崎 シャッターを押しとうなる瞬間かな。美しい夕焼けや、季節の移り変わりを感じられる時。どんなに急いで車を走らせていても、石垣に咲いてる1輪の花にも自分は気付く。山の霧のかかり方も毎回違う。雨が降った後に、柚子が少し大きくなったかなとか、そういう変化に気付くときかなぁ。
——— 豊かですよね。私も、柚子の実がどんどん大きくなっていく姿や、植物の変化を見るのが楽しみです。日々の何気ない暮らしの中に、いかに特別なことを見つけていくか。小さな幸せを見つけていくか。自分しだいで、無限大に広がりますよね。どうもありがとうございました!
(大崎さんが飼育している鶏。とても温和。)
土佐ジローの卵『キミガイイ』の詳しい紹介はこちら>>
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< お話をうかがった人 >
大崎 裕一(おおさき ゆういち)
1949年高知市土佐山高川地区生まれ。夢産地とさやま開発公社理事。自然の中で育ち、木渡りなど山遊びが得意。毎年12月に、オーベルジュ土佐山のバーから見える、静かに佇む美しいクリスマスツリーは、大崎さんの仕業。好きなことは、シャンディ一杯の晩酌。
TOSAYMA KONOHITO KONOTOKUSAN