土佐山には、 おいしい食材を届けたい、美しい産品を届けたい、
という村人たちの想いから生まれる、自慢の特産がたくさんあります。
『植物は、人間の足音を聞いて育つ』門田章広
2022 .04 .25
“あきんど” こと門田章広さんは、土佐山で唯一の苺『もんちゃんいちご』を15年以上前から 生産しています。高知県ではめずらしい、苺づくりとの出会いやこだわりについてお聞きしました。
——— 今日は苗の植え付け作業でお忙しい中、 お時間いただきどうもありがとうございます! 「土佐山・この人・この特産」というページで、地域のみなさんを紹介していきたく、まずトップバッターとして、門田さんにお願いしております。
門田 あはははは 。トップバッター(笑)。よろしくお願いします!
——— まずは、門田さんの生立ちからお聞きしても良いでしょうか。元々は土佐山生まれですか?
門田 そう。土佐山で生まれ育って、その当時は地元にいるのが嫌だという思いもあり、高校卒業後は、栃木県の大学に行った。そのまま栃木で就職をして、保険会社で働いていたんだけど、慌ただしく時が過ぎてしまい、自分らしい生き方ができないと思った。早よ帰った方がましやと…..。それで土佐山に戻ってきたのが27歳の時。
——— 苺との出会いは、いつだったのですか?
門田 知ってます? 苺の生産量1位は栃木県なんですよ。よく宣伝もしてたし、作り方をたまたま見てたんだよね。それまでは、苺を作ろうとは思ったことなかったんだけど、苺って面白いなって、 帰ってきてやろうかなと思った。土佐山では誰もまだやってなかったし、チャレンジしたいと思った。パイオニアになってやろうと(笑)。
植物は、人間の足音を聞いて育つ。
——— 苺づくりの魅力は、何だったのでしょうか?
門田 苺はね、味が分かりやすい。相手にストレートに伝わる。おいしいと言ってもらえたら、それが快感になってまた作りたいと思うんだよね。
——— 苺をおいしくつくる秘訣はなんですか?
門田 おいしさの90%以上は “自然の力”。残りは “人間の手間ひま”。ハウスが山の上にあるから、日当りも良く、土も合ったんだと思う。土佐山は特に日照時間も短いから、奇跡みたいなもんや。そして、あとは人間の愛情。父親がよく言うのは、『植物は、人間の足音を聞いて育つ。頻繁に見にいけ。水分や温度の状態、ちょっとした変化も見逃すな』と。
苺が赤くなる仕組みは、積算温度。
——— 手間ひまかける中で、一番のこだわりは何ですか?
門田 うーーん、そうやね。はじめは、炭を細かく砕いて土に入れたりもしてたかな。炭は多孔質だから、微生物の住処になって、土が良くなるんだよね。最近は炭を焼いてないけど、炭は分解しないから、補充しなくても、そのまま残る。
あとは、温度管理かな。冬は、凍える寸前まで温度を下げる。苺が赤くなる仕組みっていうのは、積算温度。長い期間かけて、温度を上げると糖が溜まっておいしくなる。だから、夜間にストーブを炊いたりして、ハウスの温度を調節するんだよね。昔は天気予報で最低気温をチェックして調整してたんだけど、予報は当てにならないから、いまはもう長年の勘です(笑)。
(山の上にあるハウス。温度調整のためにストーブが置いてある。)
——— 苺のおすすめの食べ方はありますか?
門田 そりゃあやっぱり、生でそのままガブっと食べてほしいかなぁ。あ、そうだ。生のイチゴのおいしい食べ方知ってます?
——— え? へたを持って、先端から食べるのでは…?
門田 それは、ダメ(笑)。苺はね、先端の方が糖度が高いから、へたの方から先端に向かって食べると、より美味しく感じられるんだよね。
——— そうなんですね!知らなかったです…。今度からそうしてみます!さて最後にですが、 未来の子供たちに伝えていきたいことは何でしょうか?
門田 地元の伝統や文化やね。祭りや、日々の暮らしの知恵が、自然と子供たちにも伝わっていくようにしたいね。そして、これからの土佐山を担っていってほしい。
——— 今度は苺の収穫のお手伝いにぜひ伺わせてください。どうもありがとうございました!!
(オーベルジュ土佐山へ向かう途中、久万川地区にある門田さんの農園)
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< お話をうかがった人 >
門田 章広(かどた あきひろ)
1971年高知県土佐山生まれ。27歳の時に、栃木県からUターン。土佐山で苺づくりをはじめて15年。4児の父。久万川地区にて、4世代で暮らしている。好きなことは、気の合う仲間と酒を飲むこと。
TOSAYMA KONOHITO KONOTOKUSAN