【インタビュー】花も活かした地域づくり
2017 .03 .20
土佐山で最も多くの人が集まる「嫁石 梅まつり」。約1200本もの梅が美しく咲き誇り、地域が活気溢れるきっかけともなったイベントです。 梅まつりの中心人物である、森和雄さんにお話をお聞きしました。
——— 「嫁石 梅まつり」の会場となっている梅園は、森さんの私有地だそうですが、 もともと梅が家業だったのでしょうか?
森 いいや、百姓の家で米作りをやっとったね。あとは炭焼きや植林の手入れなどの林業。 森林組合に45年間勤めよった。いま梅園になっている所は、もともとは棚田じゃった。
——— 梅を始めたきっかけは、何だったのでしょうか?
森 その話をすると長いじゃき(笑)。当時、土佐山ではみんな半年は農業、半年は林業をやりよったけんど、それだけでは生活が厳しくなってきていて、地域全体の問題やった。何か地域活性につながることはないかと、大分県大山町への国内研修派遣事業に参加した。大山町は、人口が多く農地が少ないんやけんど、梅の木の下で、ミョウガやワサビなど他の作物も同時に育てたり、面積を使わずに、多くの作物の収穫ができるよう工夫することで、専業農家でも生活が成り立っていた。
そして土佐山と同様に山間地だけんど、広大な梅林が見事で、年に一度開かれる「日田おおやま梅まつり」は1日に1万人訪れるほど盛況やった。これはええと、視察から帰ってすぐに、よっしゃと梅まつりへの準備をはじめた。田んぼだったところに、毎年300本ずつ苗木を植えて、4年かけて1200本の梅の木を育てた。
この自然は、どこっちゃーない。
——— 「嫁石 梅まつり」第一回目は、どのように始まったのでしょうか?
森 初め地元住民には、こんな冷やい山奥に人が来るもんか、と笑われた。でも、私たちは大山町でたくさんの人たちが、花を楽しむ姿を見て来たから、それは聞くもんかと(笑)。植え始めて3年くらいで花が大分咲くようになって、平成3年にイベントで人の集め方も分からないまま、とにかくやろうぜやと始めた。 高知市内や地元から30人ば集まり、梅まつり会場で宴会を開いて、村長がいないと話にならんと来てもらった 。そこから村長を中心に、梅生産組合だけではなく、みんなで協力し合って地元から盛り上げていこうとなった。その後、地元住民で改善を重ねて、第二回、三回と、 徐々に人が増えて、五回目には、何千人にもなった。
——— お客さんの反応はどうでしたか?
森 まことこりゃあ、自然がええと。嫁石*の谷間には、自然の石があって、この自然はどこっちゃーないと、言うてくれた。
* この地は昔、嶺南嶺北を結ぶ往還道で賑わい、嫁入道中の花嫁が休息のため座ったという岩があることから、「嫁石」の地名になったといわれています。
(森さんが一つ一つ丁寧に実を収穫して作っている梅干し。毎年、中川直売所「とんとんのお店」にて販売)
花で楽しみ、実をいただく。
——— 今年で26回目ということですが、森さんにとって今までの思い出深いことや、嬉しいことは何でしょうか?
森 そうじゃのぉ。いちばん嬉しいのは、村長をはじめ、多くの人たちが協力してくれて、美しい梅の花の下で交わす時間じゃの。苦労しても、梅まつりを始めた甲斐があったと思う。大山町に研修に行かなかったら、梅まつりはなかった。大山町で、暮らしていくための精神も学んじゅう。私の場合は、梅の実を作って、生きていかなきゃいかん。梅まつりも盛況になって、実もおいしくできて、本当に良かった。村が平成17年の合併で、高知市土佐山地区となってからは、市長も毎年来てくれるようになり、今では県知事や議員らも来るようになった。
——— 梅まつりは、人が集うきっかけにもなっていますね。
森 そうやね、ありがたいことに。
——— オーベルジュ土佐山ができたのも、梅まつりがきっかけなのですよね。
森 梅まつりがあることで、この山奥にまで人が来るようになっていた。地域の資源である温泉を活用して何かをしたいと、10年の歳月と何十回ものワークショップを重ねて生まれたのが『オーベルジュ土佐山』やった。それからさらに地域が活気に満ちていって、「土佐山の中心は、オーベルジュに行ってしもうた」とまで言われるようになった(笑)。普通は、役場が中心やけんどね。
——— 未来に残していきたいことは何でしょうか?
森 梅まつりをはじめ、地域の後継者が大事やね。オーベルジュも、梅まつりも、地域も、これからも発展しなきゃいかん。
——— 梅まつりを開催することで、後継者になり得るかもしれない、地域外からの人々も訪れるきっかけになっていますよね。今年も、たくさんの人々が訪れるのが楽しみですね。
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< お話をうかがった人 >
森 和雄(もり かずお)
1940年土佐山中切地区育ち。稲作などの農業をする傍ら、森林組合で45年間勤めた。常に地域のことを考え、梅まつりではいつもやさしい笑顔で迎えてくれます。好きなことは、梅まつりに訪れる県内・県外の人たちと話に花が咲くこと。
取材日:平成28年2月
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